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2012年 情報コミュニケーション学部 | 明治大学

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(2)

2012

年度『教員活動成果報告書』の発刊に寄せて

情報コミュニケーション学部では、FD活動の一環として『教員活動成果報告書』を発 刊するようになり、今回で5年目となります。この報告書は、次の基本ポリシーにもとづ

いて編集されています。

1. 本学部は学際性に注目した高度教養教育を実施するため、多くの研究分野から構 成されている。研究分野の多様性を認め、教員の強みを生かす活動とする。 2. 若い学問分野を追究する少人数学部である特徴を生かし、伝統的な権威主義に陥

ることのない、柔軟で機動的な試みに挑戦する。

3. 「学問の府」であることを再認識しつつ、大局観に立った長期的な活動を大切に していく。

4. 情報コミュニケーション学の特徴である「学際性」を目指し、自らの研究分野に 新たな柱を築くための、研究の基盤形成作業を奨励する。

5. 報告内容には研究のみでなく教育上の取り組み、学部・大学、また地域その他の 場面での活動にも配慮し、それぞれの教員の特性を理解しあい、学部全体の向上

につなげる。

この報告書をもとに、教員間で研究上の取り組みを理解しあい共同研究に発展させたり、

教育上の取り組みを伝授しあって授業改善につなげたりと、FD活動を推進させていけれ

ばと願っております。

また、教育・研究・行政そして社会貢献にかんして、教員の強みを認め合った分担を図

っていく手がかりとしたいとも思います。さらに、広く情報公開することで、学生とのコ

ミュニケーション手段としても活用できるかと存じます。

本学部の活動をご理解いただき、今後とも一層のご支援・ご鞭撻のほどよろしくお願い

申し上げます。

情報コミュニケーション学部長

(3)

【記述内容の説明】

各活動報告は、氏名/略歴につづいて、全般的な報告、教育成果報告、研究成果報告、

行政業務担当報告、社会貢献の5部構成となっており、各部の記述の詳細度や分量は、各

教員によって異なる。

1)全般的な報告(1-1と1-2は必須、1-3は任意)

1-1 過去2年間について、重点を置いた点などの具体的な記載。

1-2 今後2年間にわたる予定など。

1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望。

2)教育成果報告(範囲:当年度および前年度)

2-1 前年度担当授業(他大学への出講を含む)

当該授業での工夫や成果、教材の開発などがあれば記載(失敗でもよい)

2-2 当年度担当授業(他大学への出講を含む)

上と同様に、当該授業での成果があれば記載(将来に向けた改善案でもよい)

2-3 その他の教育上の取組み

大学院の論文指導、研究員の受入れなど、項目を立てて内容の概略記載

3)研究成果報告(範囲:前々年の4月1日から当年3月31日までの2年間)

研究書・一般書・訳書・編書・教科書の執筆、原著論文・書籍収録論文などの発表、解

説記事・書評・研究ノート・調査報告などの発表、学会研究発表・予稿執筆、辞書編纂、

特許出願、研究所や研究チームの運営、研究費の取得(申請)、フィールドワークなど、

項目を立てて内容の概略記載。なお、書誌事項の表記形式は自由。

4)行政業務担当報告(範囲:前々年の4月1日から当年3月31日までの2年間)

(注)活動してない場合や、入試の出題など秘匿性のある場合は含めない。

4-1 学部(大学院)内業務(委員名および寄与)

4-2 大学業務(委員名および寄与)

5)社会貢献(範囲:前々年の4月1日から当年3月31日までの2年間)

(注)活動してない名目だけの場合は含めない。

5-1 学会・委員会活動(役員名および寄与)

5-2 講演・講師・出演(日時場所、内容)

(4)

― 目 次 ―

社会システムと公共性コース

今村 哲也 ・・・・・・・・・・・・・・・1

江下 雅之 ・・・・・・・・・・・・・・10

清原 聖子 ・・・・・・・・・・・・・・14

鈴木 健人 ・・・・・・・・・・・・・・23

武田 政明 ・・・・・・・・・・・・・・28

塚原 康博 ・・・・・・・・・・・・・・32

中村 義幸 ・・・・・・・・・・・・・・38

堀口 悦子 ・・・・・・・・・・・・・・44

宮田 泰 ・・・・・・・・・・・・・・47

吉田 恵子 ・・・・・・・・・・・・・・49

組織とコミュニティコース

牛尾奈緒美 ・・・・・・・・・・・・・・51

金子 邦彦 ・・・・・・・・・・・・・・58

熊田 聖 ・・・・・・・・・・・・・・62

古屋野素材 ・・・・・・・・・・・・・・66

施 利平 ・・・・・・・・・・・・・・71

竹中 克久 ・・・・・・・・・・・・・・74

冨樫 光隆 ・・・・・・・・・・・・・・79

中里 裕美 ・・・・・・・・・・・・・・80

宮本 真也 ・・・・・・・・・・・・・・85

山口 生史 ・・・・・・・・・・・・・・89

(5)

多文化と国際協調コース

石川 ・芳

權藤南海子 ・・・・・・・・・・・・・・97

須田 努 ・・・・・・・・・・・・・・99

関口 裕昭 ・・・・・・・・・・・・・105

田中 洋美 ・・・・・・・・・・・・・115

南後 由和 ・・・・・・・・・・・・・119

根橋 玲子 ・・・・・・・・・・・・・125

ハウス

,

ジェームス

C

・・・・・・・・129

細野はるみ ・・・・・・・・・・・・・133

和田 悟 ・・・・・・・・・・・・・136

メディアと環境コース

石川 幹人 ・・・・・・・・・・・・・139

岩渕 輝 ・・・・・・・・・・・・・146

川島 高峰 ・・・・・・・・・・・・・150

鈴木 健 ・・・・・・・・・・・・・154

大黒 岳彦 ・・・・・・・・・・・・・159

友野 典男 ・・・・・・・・・・・・・162

波照間永子 ・・・・・・・・・・・・・166

蛭川 立

森 達也

山崎 浩二 ・・・・・・・・・・・・・171

(6)

〈今村哲也〉社会システムと公共性

今村 哲也(いまむら てつや)

1976 年 6 月,東京都に生まれる。早稲田大学本庄高等学院,早稲田大学法学部卒業後,早稲 田大学大学院法学研究科修士課程,同博士後期課程研究指導終了。博士(法学・早稲田大学)。 早稲田大学大学院法学研究科客員研究助手を経て,2006 年 4 月明治大学情報コミュニケーショ ン学部専任講師に着任,2010 年 4 月同准教授。2011 年 9 月ロンドン大学クイーンメアリー校 客員研究員ビジティングスカラー,2012 年 10 月ロンドン大学高等法学研究所(IALS)ビジティ ングフェロー。

(1)全般的な報告

1-1 過去2年間の実績

(ⅰ)教育面での実績

①講義:2011 年 4 月から 9 月まで,情報倫理,財産と法Ⅰ及び知的財産法Ⅰを担当した。授業 では配布資料を用意し,配布した資料はウェブシステムにアップしている。成績は,試験の素 点のみで評価している。なお,定期試験では解答例を公表するとともに,異議申立期間を設け て,解答例に対して異議のある学生に申立ての機会を与えている。

②ゼミナール:2011 年度前期に 2 年生のゼミを開講し,アカデミック・ライティングの手法に ついて演習を行った。

(ⅱ)研究面での実績

① 権利者等不明著作物の利用の在り方に関する研究

本研究は,科学研究費補助金(2009-10 年度)及び学内の特定個人研究の補助を得た研究であ る。2012 年度は,その成果も活用しつつ,文化庁委託事業として株式会社情報通信総合研究所 が行った「諸外国における著作物等の利用円滑化方策に関する調査研究」の報告書作成に携わ った。

② 著作権法の権利制限規定の在り方に関する研究

近時,英国では,2011 年に公表された『ハーグリーヴス・レビュー』に基づいて,知的財産 法の改革に向けた検討が進められている。本研究では英国の著作権法改革に関連する項目にお いて問題となった論点を取り上げて,現在までの議論の経緯,各論点に関する議論を整理した 上で,日本の著作権法改革への示唆を得ることにつとめ,調査研究を行った。その研究成果に ついては,「近時のイギリスにおける著作権法改革の動向からの示唆―2011 年のハーグリーヴ ス・レヴューにおける論点を中心に―」と題する論文としてまとめて,著作権法学会の論文誌 である『著作権研究』に投稿した。

③ 電子書籍の普及に向けた著作権法上の法的課題の検討

(7)

社会システムと公共性〈今村哲也〉

て考察した。2012 年度は,英国における出版契約の状況について調査研究を行った。研究の成 果については,論文の形式で公表した。

④ 地理的表示の保護に関する研究

本研究では,2005 年の商標法の一部改正によって成立した地域団体商標制度の意義につい て,国際的に多様な法的形式を有する地理的表示の保護制度の過渡的発現形態であるという考 え方の下,国際的な地理的表示保護制度の現況も踏まえて,地域団体商標制度のほかに,更な る別制度を構築する必要性があるかどうかということを検討した。研究成果は論文の形式で発 表した。

⑤ タイ知的財産法の研究(判例データベース構築事業)

この研究は,早稲田大学 21 世紀 COE 企業法制と法創造総合研究所・知的財産法制研究セン ター(センター長・高林龍教授)のプロジェクトとして 2003 年度に開始し,継続しており, 2008 年度に再び採択されたグローバル COE に引き継がれている。タイの知的財産国際貿易中央 裁判所の協力を得ることで,9 年間で 485 件のタイの裁判例を収集し,同研究所のウェブサイ トのデータベース上で公開している。

参考 URL:www.globalcoe-waseda-law-commerce.org/rclip/ ⑥ 明治大学知的財産法政策研究所

知的財産法の研究・教育拠点の形成を目的として,明治大学の特定研究課題ユニットとして 2009 年 10 月に設置された明治大学知的財産法政策研究所に参加している。研究統括は,中山 信弘特任教授(明治大学研究・知財戦略機構)である。2011 年度・12 年度は,在外研究の機 会を生かして,日本の著作権をめぐる動向を紹介するとともに,本学と英国研究者との交流を 深めることを目的に,(1)2012 年 3 月 21 日に,同研究所とロンドン大学クイーンメアリー校の 共催により,『Recent Developments in Japanese Copyright Law - Exceptions and

Limitations』と題するセミナーを開催し,(2)2013 年 3 月 20 日にも,同研究所とロンドン大 学高等法学研究所(IALS,ロンドン大学クイーンメアリー校の共催により,『 Seminar - Copyright and Digital Media - the view from Japan』と題するセミナーを開催した。

1-2 今後2年間の予定

(ⅰ)研究面での予定

現在取り組み,かつ今後2年間に重点的に取り組む研究として,以下のものがある。 ① 電子書籍の普及に向けた著作権法上の法的課題の検討

本研究では,電子書籍の普及に際して問題となる著作権法その他の法律上の課題を掲げて,そ れに対する調査と検討する。具体的な論点として,(1)出版物の権利関係をめぐる現状の整理,(2) 出版社の権利や出版権の設定範囲の拡大の是非,(3)電子書籍の普及に向けた権利処理の円滑化の 方策(権利者不明著作物や集中管理団体の問題を含む)について,出版社へのヒアリング等の実態 研究や,諸外国の現状や制度の状況を調査し,これらの課題の検討に資する資料を提供する。 ② 知的財産法と公共政策上の多元的価値との関係に関する研究

(8)

〈今村哲也〉社会システムと公共性

③ 地理的表示と商標の保護との関係に関する研究

最近,農水省が地理的表示の保護に関する新制度の導入を検討しており,新制度が導入された 場合のことも想定される。その場合,商標との抵触関係が特に問題となると思われることから, このテーマについて数多くの実例が存在する EU の状況を分析対象としながら,地理的表示と商標 の保護との関係について調査研究を行う。最終的に,このテーマを含めて,地理的表示の保護に 関するこれまでの研究の成果を整理し,研究書としてまとめたいと考えている。

(ⅱ) 教育面での予定 ① 教育手法の在り方

在外研究の機会を活用し,英国における大学院の授業等に参加し,特色のある教育手法につい て観察し,本学部での教育に生かせる部分を学びとる。

② 非法学部における法学教育の方法論の模索

本学部のような非法学部における法学教育の在り方について模索する。 ③ 学部の学際性を生かした教育

本学部では,その特色である学際性を十分に生かした教育を行うことが重要であると思われる ので,各種の機会を生かして,そのことを実現する。

1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望

本学部の情報コミュニケーション学は,研究面においては,教員相互の必要に応じた学際的な 共同研究の試みによって高められる部分が大きいと思われる。また,教育面においても,単に幅 広い断片的な専門・教養を与えるだけではなく,それを有機的に連関させてより総合的な理解を 獲得するための思考方法も教授しなければならないと思われる。FD などを通して,教員間におけ る情報コミュニケーション学の方法論に対する共通認識を様々に試行錯誤しながら意識的に構築 していくことが必要と思われる。

専門科目との関係では,情報コミュニケーション学の枠組みの中で,「体系性のある法学教育」 をどのように実施していくのかについて,学部内あるいはコース会議の中で検討するとともに, 本学部の法学科目担当者間のより積極的な連携が必要なのではないかと思われる。

(2)教育成果報告

2-1 前年度担当授業

1. 情報倫理

授業では,村田潔編『情報倫理:インターネット時代の人と組織』(有斐閣,2004 年を使用 している。このテキストを極力分かりやすく解説するために,自分で作成したレジュメも配布 するとともに,パワーポイントやビデオ教材も利用した。受講生は 345 名。試験は持ち込み不 可で,論述式とキーワードを記入する問題との組み合わせによって実施し,解答例も公表した。 2. 財産と法Ⅰ

(9)

社会システムと公共性〈今村哲也〉 3. 知的財産法Ⅰ

著作権法を中心に講義を行った。教科書として島並良・上野達弘・横山久芳『著作権法入門』 (有斐閣,2009 年)を使用した。また,それを補うために,自分で作成したレジュメやパワ ーポイントも用いた。加えて,特許庁及び文化庁の各外郭団体からも資料を取り寄せて配布し た。受講生は 76 名。試験は持ち込み不可で,選択式の問題と簡単な記述式の説明問題を出し た。学生に異議申立ての機会を与えるため,試験後に解答例を公表し,一定の異議申立期間を 設けた。

4. 問題発見テーマ演習 A

この演習では,アカデミック・ライティングの手法を学ぶことで,学術的に評価に値する内容や 表現をもつ論文とは何かについて理解させることに取り組んだ。具体的には,学術的文章の特徴, 調査の仕方,フィードバックの仕方,ピアレビューの手法,定義の用い方,学術的文章の語彙,分 類の手法,比較と対照の方法,ヘッジングとブースティング,剽窃を回避する方法等を学んだ。受 講生は 27 名。参考書として,戸田山和久『論文の教室―レポートから卒論まで』 (NHK ブックス, 2002 年)を利用した。

5. 情報コミュニケーション学入門 A(コーディネータ・中村義幸教授)

オムニバス形式の講座について「著作権と『文化』の発展」と題する講義を 2011 年 6 月 14 日に実施した。レポート課題については,事前に採点の基準を明示した。

6. 情報コミュニケーション学(コーディネータ・石川幹人教授)

オムニバス形式の講座について「コピーから権利を守る法的枠組み」と題する講義を 6 月 8 日・15 日に実施。レポートは 10 点満点で採点し,採点基準を示した上で,評価を添えて,学 生に返却した。

7. 情報コミュニケーション学(コーディネータ・須田努教授)

オムニバス形式の講座について「マイノリティ―知的財産法の分野から(Antonia

Bakardjieva ENGELBREKT 教授の論文を参考に)」と題する講義を 6 月 22 日に行った。レポート は,採点基準を示した上で,評価を添えて,学生に返却した。

8. 知的財産権・ライツマネジメント1・映像の知的財産権(早稲田大学川口芸術学校・早稲 田大学オープン教育センター)

オムニバス形式の講座主任として講義を行った。 9. 知的財産権法1(早稲田大学社会科学部)

知的財産法のうち著作権法を中心に講義を実施した。

2-2 当年度担当授業

2012 年度は授業を担当していない。

2-3 その他の教育上の取組み

特になし。

(3) 研究成果報告

1. 調査研究報告書:株式会社情報通信総合研究所編『平成 24 年度文化庁委託事業 諸外国 における著作物等の利用円滑化方策に関する調査研究報告書」(2013 年 3 月)[「カナダ」, 「EU における孤児著作物指令」,「イギリス」および「イギリスのデジタル著作権取引所」 の章を担当]

〈今村哲也〉社会システムと公共性

内容:報告書の分担部分において,いわゆる権利者不明著作物(orphan works)の問題に ついて,カナダの強制許諾制度,EU の 2012 年孤児著作物指令,英国における政策の最新 動向について,文献資料やコンファレンス等で得た知見をベースに調査分析するととも に,著作権のライセンス取引を円滑化するための施策である英国の著作権 Hub のプロジェ クトについて,関係者にヒアリングをするなどして調査した。

2. 論文:今村哲也「地理的表示に係る国際的議論の進展と今後の課題」特許研究 55 号(2013 年 3 月)

内容:本稿では,地理的表示を巡る議論に関して,国際的議論のフォーラムとしての WIPO, WTO および RTAs(地域貿易協定)における議論の状況について整理するとともに,我が国 の今後の課題について検討した。

3. 論文:今村哲也「出版者の権利に関する比較法的考察――イギリスの立法例を参考として」 高林龍=三村量一=竹中俊子編集代表『現代知的財産法講座Ⅲ 知的財産法学の国際的交 錯』(日本評論社,2012 年 12 月)83-102 頁

内容:本稿では,著作者と出版者との権利関係について,著作権の取得,設定出版権(出 版権制度の内容,出版権制度の沿革,電子出版に対する設定出版権の限界),出版許諾契 約,版面権に関する議論について説明した。その上で,諸外国の立法例として,英国にお ける発行された版の印刷配列の保護,パブリケーション・ライツの制度,およびオースト ラリアの制度について紹介した。出版者に固有の権利を認めている立法例について,その 正当化根拠,歴史的な沿革との関係を整理するとともに,利用被許諾者(ライセンシー) に一定の訴権を付与する立法例を紹介した。以上の検討から,出版者の保有するべき権利 に関する議論に対して比較法的示唆を得た上で,出版者に対する権利保護の在るべき方法 について,一定の結論を述べている。

4. 学説紹介:安藤和宏=今村哲也「知財学説の動き-著作権法-」『年報知的財産法 2012』 (2012 年 12 月)138-158 頁

内容:2011 年 8 月から 2012 年 7 月までに公表された著作権に関連する論文で展開された 学説を網羅的に紹介したもの。

5. 博士論文:今村哲也「地理的表示の保護と地域団体商標-過渡的発現形態説を基軸として -」(2012 年 9 月,早稲田大学)

内容:地域団体商標制度によって成立した地域団体商標制度の意義について,国際的に多 様な法的形式を有する地理的表示の保護制度の過渡的発現形態であるという考え方の下, 国際的な地理的表示保護制度の現況も踏まえて、地域団体商標制度のほかに、更なる別制 度を構築する必要性があるかどうかということを分析した。

6. 論文:今村哲也「イギリスにおける出版契約と出版者の権利について─我が国における出 版者の権利の付与に関する議論への示唆」季刊企業と法創造 33 号(2012 年 9 月)309-322 頁

内容:本稿では,英国における出版分野の最近の動向,英国における出版契約の概要,英 国独自の出版者の権利である発行された版の権利の制度,そして,現在の我が国の出版者 の権利をめぐる議論に対する示唆を述べた。

(10)

〈今村哲也〉社会システムと公共性

内容:報告書の分担部分において,いわゆる権利者不明著作物(orphan works)の問題に ついて,カナダの強制許諾制度,EU の 2012 年孤児著作物指令,英国における政策の最新 動向について,文献資料やコンファレンス等で得た知見をベースに調査分析するととも に,著作権のライセンス取引を円滑化するための施策である英国の著作権 Hub のプロジェ クトについて,関係者にヒアリングをするなどして調査した。

2. 論文:今村哲也「地理的表示に係る国際的議論の進展と今後の課題」特許研究 55 号(2013 年 3 月)

内容:本稿では,地理的表示を巡る議論に関して,国際的議論のフォーラムとしての WIPO, WTO および RTAs(地域貿易協定)における議論の状況について整理するとともに,我が国 の今後の課題について検討した。

3. 論文:今村哲也「出版者の権利に関する比較法的考察――イギリスの立法例を参考として」 高林龍=三村量一=竹中俊子編集代表『現代知的財産法講座Ⅲ 知的財産法学の国際的交 錯』(日本評論社,2012 年 12 月)83-102 頁

内容:本稿では,著作者と出版者との権利関係について,著作権の取得,設定出版権(出 版権制度の内容,出版権制度の沿革,電子出版に対する設定出版権の限界),出版許諾契 約,版面権に関する議論について説明した。その上で,諸外国の立法例として,英国にお ける発行された版の印刷配列の保護,パブリケーション・ライツの制度,およびオースト ラリアの制度について紹介した。出版者に固有の権利を認めている立法例について,その 正当化根拠,歴史的な沿革との関係を整理するとともに,利用被許諾者(ライセンシー) に一定の訴権を付与する立法例を紹介した。以上の検討から,出版者の保有するべき権利 に関する議論に対して比較法的示唆を得た上で,出版者に対する権利保護の在るべき方法 について,一定の結論を述べている。

4. 学説紹介:安藤和宏=今村哲也「知財学説の動き-著作権法-」『年報知的財産法 2012』 (2012 年 12 月)138-158 頁

内容:2011 年 8 月から 2012 年 7 月までに公表された著作権に関連する論文で展開された 学説を網羅的に紹介したもの。

5. 博士論文:今村哲也「地理的表示の保護と地域団体商標-過渡的発現形態説を基軸として -」(2012 年 9 月,早稲田大学)

内容:地域団体商標制度によって成立した地域団体商標制度の意義について,国際的に多 様な法的形式を有する地理的表示の保護制度の過渡的発現形態であるという考え方の下, 国際的な地理的表示保護制度の現況も踏まえて、地域団体商標制度のほかに、更なる別制 度を構築する必要性があるかどうかということを分析した。

6. 論文:今村哲也「イギリスにおける出版契約と出版者の権利について─我が国における出 版者の権利の付与に関する議論への示唆」季刊企業と法創造 33 号(2012 年 9 月)309-322 頁

内容:本稿では,英国における出版分野の最近の動向,英国における出版契約の概要,英 国独自の出版者の権利である発行された版の権利の制度,そして,現在の我が国の出版者 の権利をめぐる議論に対する示唆を述べた。

(11)

社会システムと公共性〈今村哲也〉

えたうえで,EU における取り組みの現状について紹介した。

8. 判例研究・判例解説:今村哲也「小売等役務商標の独占権の範囲」ジュリスト臨時増刊・ 平成 23 年度重要判例解説 1440 号(2012 年 4 月)287-288 頁

内容:知財高判平成 23 年 9 月 14 日(最高裁 HP)[平成 23 年(行ケ)10086 号審決取消請 求事件]の評釈。小売等役務商標の独占権の範囲について,同制度の趣旨や知財高裁のア プローチを解説するとともに,クロスサーチの要否の議論との関係についても触れた。 9. 判例研究・判例解説:今村哲也「専用実施権を設定した特許権者による差止請求の可否」

中山信弘=大渕哲也=小泉直樹=田村善之編『特許判例百選』別冊ジュリスト 209 号(2012 年 4 月)196-197 頁

内容:最二判平成 17 年 6 月 17 日民集 59 巻 5 号 1074 頁[(平成 16 年(受)第 997 号特許 権侵害差止請求事件)]の評釈。専用実施権を設定した特許権者による差止請求の可否に ついて説明した。

10. 判例研究・判例解説:今村哲也「『福島県喜多方市におけるラーメンの提供』を指定役務 として出願された本願商標「喜多方ラーメン」は,地域団体商標における周知性要件を具 備していないとした拒絶査定不服審判を維持した事例」判例評論 635 号(2012 年 1 月)159-164 頁

内容:知財高判平成 22 年 11 月 15 日判時 2111 号 109 頁[喜多方ラーメン]の評釈。本判決 の意義について述べるとともに,緩和された識別力の意味について,識別先の程度の緩和 と識別先の出所の緩和に分けて,後者については,緩和説と非緩和説(本判決)とがある ことを示し,それぞれの立場について検討した。また,地域団体名称の普通名称化につい ても言及した。

11. 学説紹介:安藤和宏=今村哲也「知財学説の動き-著作権法-」『年報知的財産法 2012』 (2011 年 12 月)58-75 頁

内容:2010 年 8 月から 2011 年 7 月までに公表された著作権に関連する論文で展開された 学説を網羅的に紹介したもの。

12. 講演録:ゲスト:奥邨弘司,司会:今村哲也「第 10 回 著作権の侵害主体」高林龍編著 『早稲田大学ロースクール著作権法特殊講義 3 著作権ビジネスの理論と実践 Ⅱ』(2011 年 11 月,成文堂)279-288 頁

内容:早稲田大学大学院法務研究科で開講された著作権特殊講義(JASRAC 寄附講座)の講 義録。第 10 回の講義において奥邨弘司先生の講義の導入として著作権の侵害主体に関す る説明を行うとともに,司会を務めた。

13. 講演録:ゲスト:安藤和宏,司会:今村哲也「第 4 回レコード製作者の権利」高林龍編著 『早稲田大学ロースクール著作権法特殊講義 3 著作権ビジネスの理論と実践 Ⅱ』(2011 年 11 月,成文堂)71-72 頁

内容:早稲田大学大学院法務研究科で開講された著作権特殊講義(JASRAC 寄附講座)の講 義録。第 4 回「第 4 回 レコード製作者の権利とその適用範囲」の講義において安藤和宏 教授の講義の司会を務めた。

14. 論文:今村哲也「出版者の保有するべき権利のあり方について」ジュリスト 1432 号(2011 年 10 月)90-98 頁

(12)

〈今村哲也〉社会システムと公共性

観したうえで,出版者に固有の権利を認めている立法例や利用被許諾者に一定の訴権を付 与する立法例を紹介することによって,出版者の保有するべき権利に関する議論に対して 比較法的示唆を得たうえで,最後にこの問題に対する私見を述べた。

15. 判例研究・判例解説:今村哲也「放送番組を利用者からの求めに応じ自動的に送信する機 能を有する機器を用いたサービスの適法性が争われた事例(最三小判平 23・1・18)」速報 判例解説 9 号(2011 年 9 月,日本評論社)273-276 頁

内容:知財高判平成 22 年 9 月 8 日平成 21 年(ネ)第 10078 号)[TV ブレイク2審]の評 釈。本判決の意義,判例法上の位置づけについて整理した上で,その評価とその射程につ いて述べた。

16. 判例研究・判例解説:今村哲也「動画投稿・共有サービスの提供者に関する著作権侵害行 為の侵害主体性(知的財産高判平 22・9・8)」速報判例解説 9 号(2011 年 9 月,日本評 論社)261-264 頁

内容:最判平成 23 年 1 月 28 日判時 2103 号 124 頁,判タ 1342 号 105 頁(平成 21 年(受) 第 653 号)[まねき TV 上告審]の評釈。本判決の意義,判例法上の位置づけについて整 理した上で,その評価とその射程について述べた。

17. 論文:今村哲也「地域団体商標という制度選択の意義とその課題―地域ブランド保護に関 する制度の方向性について」日本工業所有権法学会年報 34 巻(2011 年 5 月)29-61 頁 内容:地域団体商標制度の現状を確認した上で,地域ブランドを保護するために地理的表 示保護制度などの別の制度が(追加的に)必要であるかということについて,①地域団体商 標制度以外の別の制度が是非とも必要とされるかどうかという積極的理由の有無,②別の 制度を採用しても特に不都合がないかどうかという内在的な消極的理由の有無,③現在の 地域団体商標制度に不都合がないかどうかという外在的な消極的理由の有無を踏まえた 上で,結論を述べた。

18. 学会報告等:Tetsuya Imamura,"The Emerging Legislative Discussion on New Neighboring Rights for Publishers", Seminar - Copyright and Digital Media - the view from Japan, 20 March 2013 (Organised by: Queen Mary, University of London; Intellectual Property Law and Policy Institute (IPLPI) at Meiji University, Japan; and the Institute of Advanced Legal Studies).

内容:Orphan works are works whose copyright owner cannot be identified or traced. Japan has adopted a compulsory license system for orphan materials. I introduced an overview of this system and talk about its past record based on statistics. 19. 学会報告等:Tetsuya Imamura,"Exploitation of orphan works - Japanese compulsory

license system -", Seminar - Recent Developments in Japanese Copyright Law - Exceptions and Limitations,21 March 2012 (Organised by Queen Mary, University of London).

(13)

社会システムと公共性〈今村哲也〉

20. 学会報告等:第9回 日本知財学会 年次学術研究発表会 一般発表「権利者等不明著作物 の利用の円滑化に向けた制度の在り方について―英国における近時の法案からの示唆―」

(2011 年 6 月 25 日)

内容:英国における孤児著作物を巡る状況について,英国の現行法における孤児著作物の 取り扱いと,英国での近時の議論の状況を確認した上で,デジタルエコノミー法案におい て強制許諾制度と拡大集中許諾制度を組合せた制度が提案されたことに着目して,この背 景となった権利者団体の提案とデジタルエコノミー法案との関係を整理した。その上で, これらの議論の背景となっている北欧諸国の拡大集中許諾制度とカナダの強制許諾制度 を整理した。最後に,英国での議論状況から得られる日本法への示唆について述べた。 21. 学会報告等:東京大学著作権法等奨学研究会(JASRAC)第 27 回研究会(2011 年 6 月 23 日)

「出版者の保有するべき権利のあり方について」

内容:出版者の保有するべき権利のあり方について,主に比較法的な示唆を踏まえつつ, たとえば,出版者に対する固有の権利の付与や出版権設定範囲の拡大の是非などの論点に ついて,私見も交えながら報告をした上で,研究会参加者と議論を行った。

22. 学会報告等:今村哲也「出版者の権利に関する比較法的考察」著作権法学会(2011 年 5 月 21 日)

内容:現行法における電子出版に関する著作権にかかる出版者の権利関係について整理し た上で,米国等における電子出版に関する著作者と出版者等との権利関係をめぐる法的議 論や,出版者等に一定の場合と範囲において固有の権利を付与している諸国(英国やオー ストラリアなどにおける発行された版に関する権利や,EU の 1993 年保護期間ディレクテ ィブにおけるパブリケーション・ライツなど)での議論を紹介した。

23. 研究費獲得実績:「電子書籍の普及に向けた著作権法上の法的課題の検討」(平成 23-25 年 度科学研究費補助金(基盤研究(C)・研究代表者,研究分担者:安藤和宏兼任講師)

(4)行政業務担当報告

4-1 学部(大学院)内業務

在外研究のため担当していない。

4-2 大学業務

在外研究のため担当していない。

(5)社会貢献

5-1 学会・委員会活動

1. 著作権法学会 2. 工業所有権法学会 3. 日本知財学会

4. 早稲田大学グローバル COE 知的財産法制研究センター・研究協力員 5. 著作権情報センター賛助会員

5-2 講演・講師・出演

(14)

〈今村哲也〉社会システムと公共性

2. IT 企業法務研究所(LAIT)セミナー:2011 年 8 月 1 日・アビタスセミナールーム「イギ リスにおける知財制度改革の最新動向―ハーグリーヴス・レビュー(2011 年 5 月)の勧告 を中心に―」

3. 文化庁「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」:2011 年 7 月 11 日・グランド アーク半蔵門 3 階光の間「諸外国の著作権法等における出版者の権利及び出版契約に関連 した契約規定に関する調査研究」報告

4. 出張講義:2011 年 7 月 12 日(本庄高等学校) 5. 出張講義:2011 年 6 月 20 日(山手学院)

6. 著作権法特殊講義(JASRAC 寄附講座) における司会:2011 年 6 月 18 日 第 4 回「図書館 における著作物の活用と制度」(講師/今村哲也・ゲスト:鳥澤孝之氏(国立国会図書館)), 2011 年 7 月 30 日第 14 回「出版社のライツと契約」(講師:今村哲也/ゲスト:福井健策弁 護士(骨董通り法律事務所))

5-3 その他の社会貢献

1. 明治大学リバティアカデミーにおいて,コーディネータとして,知的財産管理技能検定3 級合格対策講座を実施している。

(15)

社会システムと公共性〈江下雅之〉

江下 雅之(えした まさゆき)

1959 年横浜生まれ。1983 年に東京大学理学部数学科を卒業、同年、三菱総合研究所に入社 し産業技術部に配属される。1992 年に同社を休職(94 年に退職)して渡仏し、Ecole supérieure des sciences économiques et commerciales の Mastère Spécialisé 課程、Université de Paris I Panthéon-Sorbonne 及び Université de Paris III Sorbonne Nouvelle の大学院 DEA 課程に 留学し、情報システム論、データベース論、コミュニケーション論等を専攻する。1999 年に帰 国、2001 年に目白大学人文学部現代社会学科に助教授として着任、2008 年 4 月に明治大学情 報コミュニケーション学部専任准教授、2011 年 4 月より同専任教授となり、現在に至る。専門 は情報社会論・メディア史など。著書に、『ネットワーク社会の深層構造』(中央公論新社)、『監 視カメラ社会』(講談社)、『マンガ古本雑学ノート』(ダイヤモンド社)、訳書に『お尻のエス プリ』(共訳/リブロス出版)、『メディアの近代史』(共訳/水声社)、学術誌投稿論文に「SNS における日記コミュニケーションとネットワーク構造に関する研究」(情報通信学会誌第 92 号、 2009)などがある。過去の執筆原稿、ゼミの活動記録、研究活動の一部などは個人サイト (http://www.eshita-labo.org/)に公開している。

(1)全般的な報告

1-1 過去2年間の実績

過去二年間における研究テーマは大きく分ければ3つあげられる。 (ⅰ)市民活動におけるソーシャル・メディアの役割

(ⅱ)女性のネットワーキング活動の構造的特徴 (ⅲ)ポスト団塊世代のライフスタイル

1点目は、一般市民の新たなコミュニケーション・ツールとして普及しているソーシャル・ メディアが、実際の市民活動においてどのような役割を果たしているかの実態を調査分析する ことを目指したものである。2011 年 1〜3 月には、いわゆる「アラブの春」に関する twitter、 facebook、YouTube のフランス語圏における利用状況を調査し、成果の一部を 2011 年に情報通 信学会で発表した。また、2012 年 3 月には、チュニジアのジャスミン革命において指導的役割 を果たしたハッカーの一人であるスリム・アマモウ氏に対し、東京でインタビュー調査を実施 する機会を得た。

2点目は、女性たちが特定の目的に沿ってゆるやかに結合し活動を実践する形態を調査分析 するものである。友人関係の形成においては、性差や学歴、職業などによる差違が認められて いる。どのような環境要因がネットワーク形成にどのような形で反映されるかを明らかにする には、今後とも多くのケーススタディの積み重ねが必要である。その一環として、いわゆるギ ャルママによる互助的なネットワークの実態調査を進めている。その成果の一部は、現在指導 中の大学院生が 2013 年度発表予定の修士論文にとりまとめている。

3点目は、1950 年代以降の世代のライフスタイル変化を系統的に分析することを目指したテ ーマである。1960 年代の学生運動が終息した後、キャンパスのレジャーランド化が進んだとい われる。大学生が消費市場の重要な担い手となり、大学生をターゲットにしたファッション誌 が大きな成功を収めた。その過程を実証的に分析するべく、2012 年度は 1970 年代〜90 年代の ファッション誌を網羅的に収集した。収集した雑誌は逐次表紙・目次、主要記事の電子アーカ イブス化を進め、その一部をジェンダーセンターで閲覧可能な状態にした。

〈江下雅之〉社会システムと公共性

1-2 今後2年間の予定

今後2年間は、女性のネットワーキング活動の実態調査とポスト団塊世代のライフスタイル 研究を中心に進める予定である。前者については他大学の研究者との共同研究を進める準備が 進んでいる。後者については、雑誌の収集およびアーカイブス化は引き続き継続するとともに、 成果の一部を論文化する予定である。

1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望

情報コミュニケーション学は新しい学問分野であり、社会に十分認知されているとは言い難 い。模擬授業においても、「情報コミュニケーション学がなにをするのかがわからない」とす る高校側の意見も多い。この学問分野を振興するには、内容の深耕のみならず、裾野の拡大が 急務であり、それは本学だけで担えることではない。よって、他大学の同分野を担う学部・学 科との連携を含め、教員の相互交流、外部有識者を招いたシンポジウムの実施、学生をまじえ たインカレ・イベントを定期的に運営することが必要であると考える。その方針に沿い、ゼミ 間の合同企画、他大学教員との研究会を今後さらに進めていきたい。

(2)教育成果報告

2-1 前年度担当授業

1. 基礎教育科目 該当科目の担当なし。 2. 講義科目

情報社会論 I および II、メディアの歴史、情報産業論、情報コミュニケーション学(消費) を担当した。

3. ゼミ科目

基礎ゼミナール、問題発見テーマ演習 A および B、問題分析ゼミナールを担当した。

2-2 当年度担当授業

1. 基礎ゼミナール(通年)

ブレーンストーミングによるアイデアの展開、構成を重視した writing communication スキ ルの修得を重視した演習およびブランド研究の入門書に関する文献購読を前期に進めた。後期 はテーマを決めたリサーチの実践的演習を進め、リサーチスキル習得を進めた。

2. 問題発見テーマ演習 A・B

前期の演習 A においてはメディア文化をテーマに、1)放送、2)音楽、3)雑誌、4)コ ミュニケーションの4領域に分けて演習を進めた。まずは最初に各領域の主要な研究成果を講 義形式で解説した。そして受講者を4グループに分け、4領域のなかからこちらが設定した課 題について、毎回2グループが発表を行う形式で演習を進めた。

後期の演習 B についても、基本的に前期と同様の進行を実施し、演習テーマは社会ネットワー クとした。

3. 問題分析ゼミナール(通年)

(16)

〈江下雅之〉社会システムと公共性

1-2 今後2年間の予定

今後2年間は、女性のネットワーキング活動の実態調査とポスト団塊世代のライフスタイル 研究を中心に進める予定である。前者については他大学の研究者との共同研究を進める準備が 進んでいる。後者については、雑誌の収集およびアーカイブス化は引き続き継続するとともに、 成果の一部を論文化する予定である。

1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望

情報コミュニケーション学は新しい学問分野であり、社会に十分認知されているとは言い難 い。模擬授業においても、「情報コミュニケーション学がなにをするのかがわからない」とす る高校側の意見も多い。この学問分野を振興するには、内容の深耕のみならず、裾野の拡大が 急務であり、それは本学だけで担えることではない。よって、他大学の同分野を担う学部・学 科との連携を含め、教員の相互交流、外部有識者を招いたシンポジウムの実施、学生をまじえ たインカレ・イベントを定期的に運営することが必要であると考える。その方針に沿い、ゼミ 間の合同企画、他大学教員との研究会を今後さらに進めていきたい。

(2)教育成果報告

2-1 前年度担当授業

1. 基礎教育科目 該当科目の担当なし。 2. 講義科目

情報社会論 I および II、メディアの歴史、情報産業論、情報コミュニケーション学(消費) を担当した。

3. ゼミ科目

基礎ゼミナール、問題発見テーマ演習 A および B、問題分析ゼミナールを担当した。

2-2 当年度担当授業

1. 基礎ゼミナール(通年)

ブレーンストーミングによるアイデアの展開、構成を重視した writing communication スキ ルの修得を重視した演習およびブランド研究の入門書に関する文献購読を前期に進めた。後期 はテーマを決めたリサーチの実践的演習を進め、リサーチスキル習得を進めた。

2. 問題発見テーマ演習 A・B

前期の演習 A においてはメディア文化をテーマに、1)放送、2)音楽、3)雑誌、4)コ ミュニケーションの4領域に分けて演習を進めた。まずは最初に各領域の主要な研究成果を講 義形式で解説した。そして受講者を4グループに分け、4領域のなかからこちらが設定した課 題について、毎回2グループが発表を行う形式で演習を進めた。

後期の演習 B についても、基本的に前期と同様の進行を実施し、演習テーマは社会ネットワー クとした。

3. 問題分析ゼミナール(通年)

(17)

社会システムと公共性〈江下雅之〉

は、活動に協力して頂いている企業より課題を出してもらい、それに沿った提案を学生が検討 し、企業を訪問してプレゼンテーションを実施した。なお、8 月には「第 5 回メディア研究イ ンカレ原村」を主催した。2008 年以来継続しているこのイベントには、今年度は関西大学総合 情報学部の岡田朋之ゼミ、実践女子大学人間社会学部の松下慶太ゼミ、関西学院大学国際学部 の丸楠恭一ゼミが参加した。

4. 問題解析ゼミナール(通年)

このゼミでは、メディア研究インカレ原村での研究発表、情コミジャーナル学生論文への投 稿を中心に活動をおこなった。インカレでの研究発表は原則5人単位のグループで、学生論文 への投稿は個人単位(参加は希望者のみ)で行った。

5. 情報社会論Ⅰ・Ⅱ(前後期)

前期は情報社会論の主要な言説を紹介するとともに、企業、社会、個人の3レベルでの情報 化の進展をマクロ的視点から講義した。後期は社会環境の変化と技術革新の推移を捉えつつ、 両者の相互作用的な影響のもと、ミクロレベルで進展する情報化の具体的内容を講義した。

6. 情報産業論(前期)

情報産業が関わっている技術領域、サービス分野などの構造を解説するとともに、具体的な 市場規模の推移、ビジネス・モデルの特徴、就業構造等を講義した。

7. メディアの歴史(後期)

ソシオメディア論の視座にもとづき、社会変化に伴うコミュニケーション行動の変化による メディア技術の選択を歴史的な文脈のなかで講義した。

8. ジェンダー・コミュニケーション I(前期)

女性とメディアの関係を中心に、少女雑誌・主婦向けの雑誌誕生の背景、ドラマにおける女 性像の変遷と女性の社会的地位の関係等を講義した。

9. 情報コミュニケーション学(通年)

「消費」をテーマとして取りあげ、消費社会論に関する主要な言説の講義、ブランディング、 ソーシャルマーケティング、若者文化という近年の日本の消費行動で注目されているテーマの 解説、マニアの消費行動に注目した講義等を中心に進めた。また、学生にはテーマごとにグル ープ単位でレポートを作成させた。

10. 総合講座「リアルタイム・メディアが動かす社会」(前期)

twitter や Ustream などリアルタイムで情報を共有し拡散するメディアの影響に注目し、こ のメディアを積極的に活用するジャーナリスト、弁護士、市民活動家等によるオムニバス形式 の講座を実施した。実験的な試みとして、講義に twitter を積極的に活用し、学生の主体的参 加を進めた。

(3)研究成果報告

1. 個人研究発表「アラブ革命とソーシャル・メディア」第 28 回情報通信学会大会、2011 年

7 月 3 日

2. 連載:電経新聞 5 回(2011 年 6 月〜10 月)ICT の最新の流行に関して

(18)

〈江下雅之〉社会システムと公共性

(4)行政業務担当報告

4-1 学部(大学院)内業務

1. 情報コミュニケーション学部教務主任(授業担当)

2. 情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター運営委員

3. 教務主任(授業担当)の役職にともなう委員会委員長および委員

(5)社会貢献

5-1 学会・委員会活動

1. 情報通信学会

2. 関東社会学会(2011 年度学会大会実行委員長)

3. 数理社会学会

4. 日本消費者行動研究学会

5. 社団法人日本文芸家協会

6. 日本社会学会

5-2 講演・講師・出演

2011 年 5 月 23 日、6 月 23 日および 12 月 22 日には、大学院情報コミュニケーション研究科 の主催でシンポジウム「検察、世論、冤罪」が実施され、いずれの回においても総合司会とし てシンポジウムの運営を進めた。最初の2回のシンポジウムはドワンゴ社のニコニコ生放送を 通じインターネットで実況中継をおこない、いずれも3万人以上の視聴者を得た。

2012 年 8 月 18 日には長野県諏訪郡富士見町の公民館の依頼により、富士見高原夏季大学の 講義を1回担当した。「アラブ革命とソーシャル・メディア」をテーマに、同町公民館におい て2時間の講演を行った。

2012 年 10 月 9 日には大学院情報コミュニケーション研究科の主催でシンポジウム「検察の 正義は失われたのか?」が実施され、総合司会としてシンポジウムの運営を進めた。

2012 年 11 月 19 日には大学院情報コミュニケーション研究科の特別講義「戦場から伝えると いうこと」を担当し、戦場ジャーナリストの常岡浩介氏および安田純平氏による講義の総合司 会を務めた。

(19)

社会システムと公共性〈清原聖子〉

清原 聖子(きよはら しょうこ)

学歴

1999年3月慶応義塾大学法学部政治学科卒業

1999年4月慶応義塾大学大学院法学研究科修士課程入学 2001年3月慶応義塾大学大学院法学研究科修士課程修了 2001年4月慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程入学

2004年3月慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学 2007年7月慶応義塾大学大学院より、博士(法学)授与(課程博士) 主な職歴

2003年10月~2006年10月東京大学大学院情報学環助手(現助教) 2006年10月~2007年3月東京大学大学院情報学環特任助手(現特任助教) 2007年4月~2009年3月(株)情報通信総合研究所研究員

2009年4月~2012年3月明治大学情報コミュニケーション学部専任講師 2012年4月~明治大学情報コミュニケーション学部准教授

(兼務として、東京大学大学院情報学環客員教員(助教相当)の他、非常勤講師を慶応義塾大 学法学部、慶応義塾大学総合政策学部、慶應義塾大学法学部通信教育、中央大学総合政策学部 にて務めてきた。その他総務省情報通信審議会専門委員などを務める。)

留学歴

2005年7月~2006年3月 フルブライト博士論文研究フェロー、 ジョージタウン大学政治学部客員研究員

(1)全般的な報告

1-1 過去2年間の実績

1. 現代アメリカにおけるテレコミュニケーション規制改革メカニズムに関する実証的研究 (科学研究費補助金若手研究(B)、個人研究:研究代表者)

(20)

〈清原聖子〉社会システムと公共性

るイデオロギー的対立」と題した論文が掲載された。さらに、久保文明+東京財団「現代アメリ カ」プロジェクト編著『ティー・パーティ運動の研究―アメリカ保守主義の変容』の中に、「Chapter 10 ティー・パーティ運動とテレコミュニケーション政策―FCC によるネットワーク中立性の規則制 定をめぐって」として、本研究課題の成果の一部は掲載された。また、2012 年 5 月には、「Journal of Law & Economic Regulation」に“Overview of the Policy on Network Neutrality in Japan: In Comparison with the Policy Development in the U.S.”論文が掲載され、 2013 年 3 月には、 ワシントン D.C.にある American University Law School において、ネットワーク中立性をめぐる政 策に関して、日米比較の観点から招待講演を行った。

2. 日米韓比較研究によるインターネット選挙運動の発展メカニズムとその展望(共同研究) 本研究は、2009 年度サントリー文化財団から得た研究助成(共同研究:研究代表者)に始ま り、その後、情報通信学会・情報社会システム研究会の研究活動などを通じて共同研究の形で 続けてきた。2011 年度は、サントリー文化財団研究助成を受けた研究課題「日米韓比較による ネット選挙の発展メカニズムの実証的研究」(共同研究:研究代表者)(2011 年 8 月~2012 年 7 月)として進めてきた。本研究は、インターネットを選挙運動に利用することに関して先進国 であるアメリカと韓国を事例として、選挙制度の差異や情報通信技術の発展に着目して、イン ターネットの利用が選挙や政治をどのように変化させるのか、というメカニズムの比較検討を 行ってきた。本共同研究の成果は、慶應義塾大学出版会より 2011 年 1 月に『インターネットが 変える選挙―米韓比較と日本の展望』(清原聖子、前嶋和弘編著)というタイトルで出版された。 また、2012 年 6 月には、情報通信学会大会において、情報社会システム研究会としてのセッシ ョンを開催(司会を担当)、2012 年 8 月には韓国日本学会・日本政経社会学会において、共同 研究チームのメンバーのうち、3 名がペーパー発表を行った。さらに、2013 年 2 月には、明治 大学にて、ネット選挙研究会を開催し、これまでの共同研究に関するお互いの理解を深め、取 りまとめとして出版するための議論を交わした。

1-2 今後2年間の予定

来年度については、これまでに行ってきた個人研究・共同研究の成果発表の機会を増やした い。再来年度については、アメリカでの在外研究が予定されている。

1-3 情報コミュニケーション学に向けた将来展望

本学に奉職して4年目である私にとって、情報コミュニケーション学とは、既存の研究の枠 を超え、学際的に様々な分野の専門家と連携することで、研究の視野が広がり、新しい研究課 題を創発することができる、将来性の高い学問である。私はこれまでアメリカ政治を基盤に情 報通信政策の研究を行ってきたが、将来的にはその専門性を生かして、異分野の研究者との連 携による授業・研究指導に尽力したい。そういう観点から、2012 年度は初めて情報コミュニケ ーション学のコーディネーターを務め、学部内のアメリカ社会に詳しい教員と、外部の専門家 や実務家をお招きして、講義を行った。

(2)教育成果報告

2-1 前年度担当授業

(21)

社会システムと公共性〈清原聖子〉

その仕組みから初学者にもわかりやすく解説し、AT&T の分割をはじめアメリカの情報通信政策 の歴史を踏まえ、最近のオバマ政権の情報通信政策の特徴までを網羅して説明してきた。授業 内で連邦通信委員会などのホームページや YouTube の動画も利用することで、学生にインター ネットを使ってどこに行けばアメリカの情報通信政策の最新情報が入手できるのか、という点 を示すように心掛けた。なお、本授業では就職活動中の 4 年生のことを考慮し、出席は取らな かったが、書評レポートとリサーチ・ペーパー(アメリカのデジタル・デバイドがテーマ)及 び定期試験の結果から総合的に評価した。また、付属高校の高校生も熱心に授業を聴講し、勉 強になったとコメントシートを受け取ったことは、良い励みとなった。

2. 情報政策論A(英語版)

本講義は、上述の日本語で行う情報政策論Aと同様の内容を英語で行うというものであった。 そもそも情報政策論Aの内容はアメリカの情報通信政策を扱っており、それを留学生ではない 日本人学生に英語で教えて理解できるのかと懸念していたが、予想通り留学経験のある学生し か履修しに来なかった。しかし非常に少人数の環境で勉強ができるということで履修者は満足 していたようである。また、グローコムの研究者をゲスト・スピーカーに迎えるなど、ネイテ ィブ・スピーカーによる講義を受ける機会も設けた。履修者とゲスト・スピーカーとの懇談会 の場も設け、少人数であるがゆえに充実した時間を提供できたと思われる。学生はリサーチ・ ペーパーを 2 本英語で執筆し、出席点とこのペーパーにより、総合的に評価を行った。 3. 情報政策論B

情報政策論Aで扱ったアメリカの事例と対比的に、主に日本の情報通信政策について扱うが、 前期未履修者にも配慮して、アメリカの政策形成過程の仕組みについても適宜ふれて講義を行 っている。主に日本の情報通信政策がどのようにして形成されるのか、1985 年の電電公社の民 営化など歴史的展開や官僚制や審議会の役割など政策形成過程の特徴から講義し、政治学初心 者にもわかりやすい内容を心がけている。今年度も情報政策論Bでは、日本の情報通信政策に 直接携わる方々として、総務省からゲスト・スピーカーをお招きした。特にこのころ、日本で 初めて電波オークションが行われるという展望が開けた時期であり、その担当部長にお話を伺 う機会は貴重であった。本授業の評価は、出席を重視し、中間試験とレポートで総合的に行っ た。

4. 問題発見テーマ演習A

政治学演習「インターネットが変える政治・選挙―日米韓の比較」ということで、今年度は テーマ設定を行った。『インターネットが変える選挙―米韓比較と日本の展望』に加えて三浦博 史『ネット選挙革命』などを題材に、日本の政治や選挙がネットの利用が進むことでどのよう に変わるのか、あるいは変わらないのか、という点を議論することに主眼を置いた。履修者も 多く、出席率も高かったので、毎回グループディスカッションの時間を設けることができた。 2002 年の韓国大統領選挙戦に携わった経験を持つ李洪千氏をゲスト・スピーカーとして迎え、 韓国の選挙についてご講演いただいた。またゲスト・スピーカーとともに学生とランチをとり、 学生にとってとても楽しいひと時だったようである。

5. 問題発見テーマ演習B

(22)

〈清原聖子〉社会システムと公共性

ディスカッションを学生がしていく形式をとる。アメリカ政治・社会をより深く理解するために、映 画もテキストとして利用した。また、評価は出席・書評レポート・試験による総合評価であった。 6. 問題分析ゼミナール(通年)

当該年度の 3 年生は非常に勉強熱心な学生が集まった。前期は『インターネットが変える選挙―米 韓比較と日本の展望』を輪読し、選挙と SNS を切り口に現代の情報社会における政治参加の問題を検 討した。江戸川区議会議員をゲスト・スピーカーにお迎えし、現実の政治の世界を垣間見ることがで き、学生は大変喜んでいた。3 年生は夏以降「デジタル・デバイド」を大きなテーマとして、各自が 個別テーマを設定しリサーチ・ペーパーを執筆することとした。そのうち 1 名は情コミジャーナルに 投稿した結果、佳作の対象となり、本人にとっても、指導する側にとっても、非常に嬉しいできごと であった。

また、今年度から学生の協力により、ゼミのブログを大幅にリニューアルした。 (http://kiyoharaland.com/)

後期は、政治学の基本的な考え方について知識を養うため、森脇雅俊『政策過程』を輪読した。ま た、学生の論文発表の際に、総務省から毎年鈴木茂樹氏にお越しいただき、コメントを頂いており、 ゼミ生には大変好評であった。

7. 問題解決ゼミナール(通年)

3、4 年のゼミは 2 コマ連続合同で行った。夏合宿は房総半島の安房鴨川で行い、4 年生の卒業論文 の進捗状況の説明、3 年生のリサーチ・ペーパーの方向性の確認に加え、南房総 IT 推進協議会の方 にゲスト・スピーカーでお越しいただき、南房総の地域 SNS の実態と課題についてお話を伺うことが できた。今回初めて合宿先を大学のセミナーハウス以外にしたことで、地元の方のお話を伺うことが でき、良かったと思われる。

後期には、卒論の進捗状況に合わせて、研究報告を数回行った。最終的には、4 年生の卒論、3 年 生のリサーチ・ペーパーを集め、ゼミの思い出写真などを入れた卒業論文アルバム集を作成した。毎 年 4 年生の思い思いの卒業論文アルバム集ができあがるのは、ゼミの歴史を積み重ねる上でよい取り 組みである。なお、情コミジャーナルに、4 年生からも一人投稿し、掲載が決定した。毎年情コミジ ャーナルに投稿するように勧めているが、投稿した論文が無事に採録決定されると、指導する側もほ っとすると同時に大きな励みになる。

2-2 当年度担当授業

1. 情報政策論A(前期)

本講義では前年度に続き、アメリカの情報通信政策はどのように形成されるのか、その仕組み から初学者にもわかりやすく解説し、AT&T の分割をはじめアメリカの情報通信政策の歴史を踏ま え、最近の新しいオバマ政権の情報通信政策について、これまでとの差異や今後の展望について 検討してきた。授業内で連邦通信委員会などのホームページや YouTube の動画も利用することで、 学生にインターネットを使ってどこに行けばアメリカの情報通信政策の最新情報が入手できる のか、という点を示すように心掛けた。なお、本授業は、出席点、書評レポートと定期試験を総 合して評価対象とした。

2. 情報政策論B(後期)

(23)

社会システムと公共性〈清原聖子〉

も情報政策論Bでは、日本の情報通信政策に直接携わる方々として、総務省からゲスト・スピ ーカーをお招きした。本授業の評価は、出席を重視し、小レポートと期末レポートで総合的に 行った。

3. 基礎ゼミナール(通年)

本年度の基礎ゼミナールのテーマは「政治学入門―メディアが政治や選挙に与える影響を考 える」である。前期は 3 名 1 チームとして、自分たちで選択したニュースに関する新聞報道の 温度差について比較検討を行った。また、政治学の基本的文献について担当教員による解説及 び履修者による報告を中心に授業を進めた。後期は、2012 年 12 月に衆議院総選挙が行われた ため、選挙に関する新聞・テレビの報道分析をグループ単位で行ったり、政策論争を政党ごと に比較検討する試みも行った。また、元江戸川区議会議員(衆議院選に出馬)をゲスト・スピ ーカーにお招きし、学生の選挙や地方自治に対する関心を高めるような工夫を行った。最終的 には個々人がメディア・ネット、政治、選挙という大きなテーマから、リサーチ・ペーパーを 執筆し、ペーパーの内容を整理してプレゼンも行った。初めての試みとして、1 年生の今後の 論文執筆の参考になるように、清原ゼミ 3、4 年生の情コミジャーナル論文掲載決定者 3 名によ る研究発表を聞く機会も設けた。その発表の後の 1 年生の発表を聞くと、先輩の発表を聞く効 果は大きかった。

4. 問題発見テーマ演習A(前期)

本年度前期のテーマは、政治学演習「インターネットが変える政治・選挙―日米韓の比較」 であった。基本的には、前年度と同じ内容である。「アラブの春」に象徴されるように、インタ ーネットが近年様々な国の政治に及ぼす影響は大きい。そこで、『インターネットが変える選挙 ―米韓比較と日本の展望』などの文献を読むことを中心に、日本、アメリカ、韓国の政治や選 挙がネットの利用が進むことでどのように変わるのか、どのような影響を受けているのか、と いう点を議論することに主眼を置いた。履修者も多く、出席率も高かったので、毎回グループ ディスカッションの時間を設けることができた。2002 年の韓国大統領選挙戦に携わった経験を 持つ李洪千氏をゲスト・スピーカーとして迎え、韓国の選挙についてご講演いただいた。それ を機会に、韓国をリサーチ・ペーパーの事例に取り入れようとする履修生が増えたようであっ た。

5. 問題発見テーマ演習B(後期)

本年度のテーマは、前年度と同じく、政治学演習(アメリカ政治と社会)であった。進め方 は前年度と違い、毎回担当者を決め、担当者がテキストの内容を簡潔にプレゼンした上で、全 体でディスカッションを行った。選挙や政策過程、メディアの役割、大統領制、マイノリティの問 題など、様々なトピックを扱ったが、本年度の履修生は外交政策に関心が高かった。日米関係では TPP をめぐる問題が、また、尖閣諸島をめぐる日中関係の危機感からか、日米関係をどうとらえるか、 沖縄の米軍基地をどうするべきか、といったことに関心の強い学生が多かった。また、アメリカ政治・ 社会をより深く理解するために、映画もテキストとして利用した。評価は出席・リサーチ・ペーパー による総合評価である。

6. 情報コミュニケーション学(通年)

参照

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